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一言居士の独言

STAP事件関連細胞株内におけるミトコンドリアDNAの一変異存在割合の問題1

Ts.Marker 氏がSTAP関連細胞株RNA公開データベース情報内に存在していたmtDNAの一変異の存在に関して報告されている。AC129に関する問題とは別にここで検討したい。

この事実が報告されたのは2017/11/23である。以下、彼のブログである。


>>


ミトコンドリア1


  たった16Kbしかないミトコンドリアでくっきり1箇所。

    CTS1だけない。 確定かな?


Tru-seq
SRR1171560 ESC                  T:1572(100%) A:0
SRR1171580 STAP                T:2396(100%) A:1
SRR1171585 STAP-SC(FLS?Acr) T:1245(85%)  A:217(15%)  ??
SRR1171565 FI-SC(B6+α?)    T:2212(100%) A:2
SRR1171590 TSC                  T:2359(100%) A:0   
SRR1171556 CD45+               T:2000(100%) A:1
SRR1171558 Epi-SC              T:1103(100%) A:0

ChIP-seq input 
SRR1171564 ESC                   T: 191(100%) A:0
SRR1171584 STAP                 T: 178(100%) A:0
SRR1171589 STAP-SC            T: 171(100%) A:0
SRR1171569 FI-SC(CTS?Acr) T: 144(100%) A:0
SRR1171594 TSC                   T: 229(100%) A:0


SMARTer-seq
SRR1171574 ESC                   T:1396(100%) A:0
SRR1171578 STAP                 T: 970(100%) A:1



WGS



DRR028646 FES1                T:3625(80%)  A:921(20%)
DRR028638 129/GFP ES      T:2963(80%)  A:733(20%)
DRR028632 FLS3                T:1949(49%)  A:1992(50%)
DRR028633 FLS3                T:1912(49%)  A:2015(51%)
DRR028642 CTS1                T:3718(100%) A:4
DRR028643 CTS1                T:3667(100%) A:5



  WGSの残りはマッピング中。時間がかかる.....


-------------           11/26  追加      -----------------------
DRR028652 FES2                 T:5307(100%) A:4
DRR028656 129CAG             T:1219(100%) A:0

(Low coverage sequencing of 129 and C57BL/6)
 WGS  Illumina HiSeq 2000- Peter Sorger-Harvard Medical School
SRR1614029 129X1/SvJ        T:3(100%) A:0 G:0 C:0


-------------          11/29  追加      -----------------------
DRR028644  ntESG1              T:4990(100%) A:4


--------------          12/5  追加      -----------------------
DRR028650  ntESG2              T:4291(100%) A:1

SRR2917581 ICR ?                         T:219(100%) A:0


--------------          12/7  調べ    -----------------------
Mouse strain assembly hub - May 3, 2017 より

DBA/2J T
129S1/SvImJ T
BALB/cJ T
C57BL/6NJ T
NOD/ShiLtJ A

ミトコンドリア2


「確定かな?」は何も説明が無く、独り言の類なので何も人には伝わらない。ただ、ここには一個の事実が提示されているということである。
この事実を自分なりに理解しようと努力された最初の人が和モガ氏であった。以下、和モガ氏のブログである。


>>
STAP細胞事件」-FLS3にはクローンの痕跡がある
2017/11/20(月) 午前 9:02にTs.Maker氏のブログのコメントに次のコメントが書かれていた。Ts.Maker氏自身のコメントである。

「memo chrM 12,188」

「chrM」とはミトコンドリアのDNAを指し、何かを見つけたのでその地番を12,188とメモ書きしたということであろう。

体細胞は核DNAの他にミトコンドリアに独自のDNA(mtDNA)を持つ。このmtDNAは必ず母親から子に受け継がれ、父親から受け継がれることはない。したがってmtDNAを調べれば、母親、母親の母親、さらに母の母の母と女系を遡ることができる。またmtDNAは組換えが起こらないので、mtDNAに違いがあるとすればそれは突然変異によるということになる。

私はFLS3がクローンマウスの仔から作られていると考えていたので、FLS3がクローンならミトコンドリアは移植先のmtDNA(おそらくICRマウス)になり、ミトコンドリアを調べれば129B6F1の母親側の129マウスとは違う塩基(SNP)が見つかるだろうと思っていた。そこで、このコメントを見て、すぐFLS3のミトコンドリアを見にいった。

IGVで見ると①のようになっていた。これは予想外であった。①のFLS3に塩基AとTが半々ずつ出ていたからである。mtDNAは母親のDNAしか持っていないので、1塩基中に2種類出るとは思っていなかったのである。


ミトコンドリア3


しかし、文献「体細胞クローン金華豚、およびその後代産子におけるドナー体細胞由来mtDNAの伝達性」を見ると、次の記述があり、体細胞クローンではドナーとレシピエントのmtDNAが混在すると書かれていた。

体細胞クローンウシでドナー由来のmtDNAが検出されて(Hiendlederら1999;Steinbornら2000)以来、体細胞クローン動物に関しては、伝達割合に差はあるものの、クローン個体内でドナーとレシピエント双方由来のmtDNAが混在する状態(ヘテロプラズミー)と考えられつつある(Takedaら」2000;Inoueら2004)

AとTが両方でるのは、FLS3が体細胞クローンで12,188番のTの塩基はドナーの129B6F1の129系塩基T(②)に、レシピエントのmtDNA(おそらくICRマウスで塩基はA)が混在しているからだと思われる。

調査委員会はFLS3はFES1由来で、FES1は129×B6の受精卵ES細胞ということであった。それなら、mtDNAの12,188は②のように塩基Tで灰色表示されるはずである。作製者の太田氏は作成後、研究には使わなかったというので、突然変異が半分まで蓄積するはずもない。FLS3が受精卵ES細胞でないのは明らかだ。

もし、FES1のミトコンドリアもFLS3と同じなら、桂調査委員会が調べたFES1は太田氏の作成した受精卵ES細胞ではなく、すり替えられ太田氏作製のFES1として調査委員会に提出されていたことになる。逆に、FES1がFLS3と違うなら、それはそれで、FLS3はFES1由来とは言えないことになる。

いずれにしてもこのミトコンドリアの一塩基で桂調査委員会は詰んでいるのである。

2017.11.21 Tue l STAP細胞事件 l コメント (1) トラックバック (0) l top



ICRがAであろうという予想は上のTs.Marker氏のデータ上では外れている。以下、その2である。

>>
「STAP細胞事件」-ミトコンドリアの特異点はクローンマウスの痕跡である(2)
この129B6F1 Acr/GAG-GFPの細胞株だけを抜き出すと次のようになる。


ミトコンドリア4


それぞれの細胞株は塩基のT(チミン)が49%から100%まであり、それに伴いA(アデニン)が51%から0%になっている。

実は、「FLS3にはクローンの痕跡がある」を書いてから、もしかしたらFES1の特異点に二重塩基はないのではないかと思っていた。それは、文献「ミトコンドリア DNA 複製の常識の一端が覆る」に次の記述を見つけたからである。

個々の細胞には、数百から数千個以上ものミトコンドリアゲノムDNAがあり、しばしば突然変異することから、このDNAの組成はかなり不均一になると予測されます。また、歳をとると、一部の組織のミトコンドリアDNAは不均一になっていきます。しかし奇妙なことに、増殖している個々の細胞や新生児では全身で、全てのミトコンドリアDNAが同一の遺伝子型組成(同一のDNA配列)を持っています。この「ホモプラスミー」と呼ばれる状態へ短時間にリセットするという細胞質遺伝の現象は、酵母からヒトまで共通にみられます。

クローンの仔はドナーとレシピエント両方のミトコンドリアDNAが混在する状態(ヘテロプラズミー)で生まれてくる。このため、クローンマウスから作ったSTAP細胞のミトコンドリアはヘテロプラズミーである。そこからSTAP細胞を培養してSTAP幹細胞を作ると、その培養は細胞の形質を変える培養なのでミトコンドリアはそのままであろう。

しかし、いったん出来たSTAP幹細胞を培養するとSTAP幹細胞は増殖するので、ミトコンドリアがホモプラスミー化することになる。

つまり、クローンマウスからFLS3が作られヘテロプラズミーとなったミトコンドリアはFLS3→129/GFP ES→FES1と培養していくにつれ、次第にホモプラスミー化していき、FES1では特異点の二重塩基がみられない可能性もあると思っていたのだ。

実際には、④FES1と⑥129/GFP ESはT:80%、A:20%で共に特異点の二重塩基が検出されてる。公共データベースに登録されていた⑫STAP幹細胞はT:85%、A:15%で、Aの構成比がそれより低い。これらは、培養によるミトコンドリアのホモプラスミー化で説明できるのである。

⑤FES2については市販の129X1雌マウスとAcr/CAG-GFP B6雄マウス(岡部マウス)から作られた受精卵ES細胞だろうと思う。このため、二重塩基にはならなかった。

一方、⑯FI幹細胞、⑰CTS-1の3つの細胞株では特異点の二重塩基が消えているが、これについては完全にホモプラズミー化したということではなく、別の理由だと思う。

ついては完全にホモプラズミー化したということではなく、別の理由だと思う。

2018.01.21 Sun l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top



その3である。

>>
「STAP細胞事件」-ミトコンドリアの特異点はクローンマウスの痕跡である(3)
以下、「ミトコンドリアの特異点はクローンマウスの痕跡である(1)」で書いた「②特異点が塩基『A』を持つマウスの系統」の話である。

DNAにはその塩基の種類を見れば、マウスの系統が分かるSNPs(一塩基多型)が存在する。

FLS3が129X1雌マウスとB6雄マウスの受精卵ES細胞なら、ミトコンドリアDNAは雌の129X1になっているはずで、どこかに129X1マウス系統のSNPsを検出できるはずである。

ところが、ミトコンドリアDNAには129X1と分かるSNPsが存在しない。ミトコンドリアのDNAはわずか16,500塩基ほどで、常染色体の約一万分の一と桁違いに少ないのである。

SNPデータベースでは129X1を含めマウス系統の約90種類のSNPsが調べられるが、ミトコンドリアの特異点(12,188)が塩基「A」になるものはない。そもそも特異点はSNPsとは認識されていないのである。

その中で塩基「A」になっているマウスを調べ出したTs.Marker氏の情報は貴重なものであった。それによると、マウス系統は「NOD / ShiLtJ」である。もっとも、NOD / ShiLtJもSNPデータベースに登録されているマウス系統のひとつであるが、12,188にSNPsはないのである。


ミトコンドリア5
             特異点(12,188)が塩基「A」になっている


特異点が「A」のマウスが存在するというのは非常に重要だ。このようなマウスがホスト胚であれば、クローンマウスはFLS3のようにヘテロプラズミーで生まれてくることになる。

NOD / ShiLtJマウスを提供しているCharles River社のホームページにはNOD / ShiLtJマウスは非近交系のICRマウスが起源であると書かれている。

実験マウスはクローズドコロニーと近交系の 2 種類に大別される。近交系は兄妹交配を 20 世代以上継続した系統で、系統内の個体はまったく同じ遺伝子組成をもつ。このため、SNPデータベースにSNPsを登録することが可能である。

一方、クローズドコロニーは 5 年以上外部から種マウスを導入することなく、一定の集団内でランダム交配により維持されている系統で、このため、各個体の遺伝的性質はばらつきがある。従って、マウス系統としてのSNPsを登録できないことになる。

若山研のクローン研究に伴う「動物実験計画承認申請書」ではクローズドコロニーマウスのICRマウスが申請されており、その数は年間、2,000個である。これだけの量ならどのタイミングでもクローンをつくることは可能だろう。

1月31日から2月2日にかけて作ったFLS3のクローンマウスのホスト胚は、たまたま特異点が「A」のICRマウスであった。その後、5月25日、7月9日のCTS-1、11~13も同じICRマウスが使われたが、このときのマウスの特異点は「A」ではなく一般的な「T」でヘテロプラズミーにはならなかったのだろうと思う。

2018.01.29 Mon l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top



最近のTs.Marker 氏の書き込みである。

>>
heteroplasmy の違いから
2020年01月04日
 前記事 Chr M 12,188 memo(http://zscan4.livedoor.blog/archives/4664712.html)
 登録されたWGSデータから得られた.bamよりミトコンドリア(ChrM)のPosition12,188には、
 通常 Tのところに変異したAが混在するヘテロプラスミーが見られる。

  DRR028646 FES1 T:3625(80%) A:921(20%)
DRR028638 129/GFP ES T:2963(80%) A:733(20%)

DRR028632 FLS3 T:1949(49%) A:1992(50%)

DRR028642 CTS1 T:3718(100%) A:4

 同じメスからの受精卵でもその比率はバラバラになるという。FES1と129/GFP ES 少なくとも同じヘテロプラスミーをもつ129のメスが起源。
比率がここまで同じだとやっぱりFES1の株分けかな。誰が持ってたかはわからないが...。

母系遺伝のヘテロプラスミーの比率を変化させるには

1.卵子形成or発生の段階で初期化
2.軽度の酸化ストレス
3.過酸化水素添加
4.核移植
 など。

 CTS1でAがほぼゼロになっているので核移植が疑われるが、FLS3でAの割合が逆に増えることの説明がつかない。


 FLS3ではAの比率が上がりCTS1ではほぼゼロと傾向がバラバラになる可能性の一つは、STAP処理。

" ...the stress comprises removing at least about 40% of the mitochondria from the cell... "
と特許にあるようにSTAP処理では細胞質・ミトコンドリアをかなりの量を細胞から流出させる。
 ミトコンドリアを半減近くまで減らせば、細胞ごとのヘテロプラスミーの比率はバラバラになるんじゃないかな。
 
 ちなみにFLSの何番かはわからないが、Tru-seqのFLSと思われるデータは
 
  SRR1171585 STAP-SC(FLS?Acr) T:1245(85%) A:217(15%)
 
 とFES1や129/GFP ESに近いように見えるが5%は結構差がある。
 


  つづく...。


  つづき..

 また、3の過酸化水素による理研の特許の実施例では「MELAS細胞に、活性酸素種として過酸化水素を接触させた場合、ヘテロプラスミー状態にどのような影響が生じるか検討した。 MELAS細胞(細胞密度;1×105〜1×106cell/mL)の培地中に最終濃度100μMとなるように過酸化水素を添加し、37℃、5%CO2の条件下で30分間インキュベートした後、細胞をPBSで3回洗浄し、3日間培養した。3日間の培養後、細胞密度細胞密度が5×105〜6×106cells/mLに達した後、104〜1.2×105倍に希釈してプレーティングを行い、さらに、15日間培養を行った。」
とある。
 細胞のダメージを考慮しての例のようであるが、STAP処理はさらに厳しい酸性に25分さらすのである。こちらもヘテロプラズミーの比率を変化させたであろう。


ミトコンドリア6



私もコメント欄でやり取りしているが省く。ここで考え直すこととする。以下昨日の書き込みである。

>>
heteroplasmy の違いから - ni -
2020年01月24日

ミトコンドリア病(ヘテロプラスミー)についての情報は近年かなり豊富なようだ。暇に任せ調べていくうちにヘテロプラスミーの比率を変化させるもう一つの知見があった!

それは卵子形成時のボトルネック効果によるヘテロプラスミー割合の変動のみならず胚盤胞(Blastocyst)期でもボトルネック効果があるという。
卵子形成時の早期ボトルネックに対し胚盤胞期のボトルネックは後期ボトルネック(second bottleneack)と呼ばれヘテロプラスミー比率の変動が報告されている。

初期の論文「Rapid Mitochondrial DNA Segregation in Primate Preimplantation Embryos Precedes Somatic and Germline Bottleneck」

イメージ(https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n2132_06.pdf#search=%27blastocyst+bottleneck%27)






 例えば、ヘテロプラスミーをもつFES1の株分けらしい129/GFP ESを4倍体胚盤胞にインジェクションし4Nキメラマウスを得る。その4Nキメラマウスを筆頭著者に渡していたらsecond bottleneckによりヘテロプラスミーの比率はばらつきFES1,129/GFP ESとは違ってくるだろうということは容易に想像できる。Aの比率が増えたり(FLS3) Tの比率が増えたり(FLS1) ホモプラスミーになったり(CTS1)...。

 エアF1マウスを渡されていたんじゃないか...。




















  1. 2020/01/25(土) 07:46:42|
  2. ミトコンドリア
  3. | コメント:0
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